はじめに
トニー・スコット監督の『Top Gun (1984)』の続編、ジョセフ・コシンスキー監督の『Top Gun: Maverick (2022)』は、全米・日本で大ヒットしている。あるTweetでは"おじさんのお子様ランチ"という形容があるなど見ごたえだけでなく構成にも定評のある本作であるが、公開後しばらくたったので本作の魅力と感じたことを私視点で書こうと思う。
トップガンマーヴェリックのこと「おじさんのお子様ランチ」って言った人本当にうまいと思う。言いたいことが凝縮されてる。素晴らしい作品。
— EXCEL (@EXCEL__) 2022年6月17日
IMAXで視聴した感想。
本作の魅力
前述したように、"おじさんのお子様ランチ"とも評される本作のストーリー進行は、観客がそうあってほしいと思うとおりに進むのがほとんどで、盛り上がりに満ち満ちている。それ以外で魅力に思えた点を挙げる。
それは『音』と『俳優の表情』だ。
音
本作の何よりも大きな魅力は、音である。
大部分の人間は戦闘機が身近にある生活をしていない。耳を聾するエンジンの響きを感じることもなければ、危険な大空へのハイウェーにのることもない。そうした生活を送る一般人にとって、爆音で戦闘機の奏でる音を聞く経験はそうそうないだろう。Maverickは前作同様実機を使った撮影をしている。実機由来の、実際の空戦挙動によって生み出された数々の戦闘機の爆音は貴重な経験となる。
本作のIMAXは、観客に何物にも代えがたいその臨場感を惜しまず提供してくれる。
俳優の表情
徹底的に実機を使用していると謳われるMaverickでは、パイロット役を務める俳優は実際に戦闘機に搭乗して撮影を行ったという。映像面でも妥協することはなく、高画質で実機の様子を撮影するため、小型のIMAXのカメラをもちこみ俳優自身で操作させるという徹底ぶりである。
この結果、我々は俳優の苦悶の表情を映画館で観ることができる。戦闘機パイロットのみが通常任務で味わっている過酷なGを、意識することができる。
これは非常に大きなポイントである。通常、我々一般人が戦闘機を語るときや映像を観るとき着目しがちなのは戦闘機自身の形状であったり、その挙動であることが多いと思う。しかし現代機のほとんどは有人機であり、中にはパイロットがいる。今回映画を視聴することでその戦闘機パイロットの過酷さは浮き彫りとなる。観客はそれに気づき、俳優の苦悶に満ちた顔を見ていると、その環境で実際に働く人々に敬意を感じることができるようになる。
感じたこと
ここからはネタバレを含む、現代の戦闘機開発と映画での無人機/有人機の扱われ方についての感想となる。
全体的に本作から感じたのは、戦闘機を題材にした今作のような映画は今後出てこないだろうというある種の哀愁だった。
さて、本作は空母から発艦する伝統的なオープニングに加えて、Maverickが最新機のテストのために出勤するところから始まる。
その後さまざまなドラマが繰り広げられる本作は、最後にレシプロ機で締める。この機体は第二次世界大戦最優秀とも呼ばれる、アメリカの勝利の象徴、P-51である。
このシーンでのパイロットであるMaverickは単純に空を飛びたいがためにあえて骨董品で飛んでいるように感じたのだ。
1903年のライトフライヤーによる初飛行からおよそ100年の間開発が続けられてきた飛行機は、近年ではついに無人化の機運が高まっている。
戦闘機において大きな問題は、本作でも丁寧に描かれていたように、空戦挙動時にパイロットにかかるGである。無論Gについての制限は機体に対して荷重をかけないという側面もあるが、パイロットが気を失うと元も子もない。パイロットの意識を奪うような過度なGを避けるため、パイロットは"制限された"挙動で戦闘機を駆る。
一方で無人機を見てみると、正確にすばやい切り返しが可能である。無人機は、作戦遂行を忠実に守る。ヒトとは異なり無人機は破壊されても再び同じ性能を提供することができる。
現代において、アメリカをはじめとして開発が進む無人機は有人機のサポート的位置づけではあるもの、いずれ有人機を置き換える存在となるのは明白である。
このような現代の無人機を取り巻く状況については本作でも軽く触れられている。劇中にも語られているように実は冒頭のシーンは無人機開発のための研究のための試験なのである。
今後効率的な戦略や機動が開発されるにつれ、かつて存在したエースたちやその中で繰り広げられる人間ドラマは、やがて無機質で効率的なゲームへと変化していく。TopGunシリーズで語られている人間ドラマは、技術の発達に伴って失われていくものである。そのような状況で、かつて最優秀と謳われた飛行機に搭乗し反抗するかのように思うがまま飛び続けるMaverick、という構図はこのシリーズならではの着地のさせ方で、いまこのタイミングでのみ描き切ることができるのだ。